PLP会館大阪地方自治研究センター研究員 尹 誠國
韓国の国会は一院制で議員総数は300 人である(選挙区254人、比例代表46人)。そして、公職選挙法の規定により、比例代表候補者名簿の奇数の番号には女性を立候補させなければならない。4 月10日の総選挙の投票率は67%で、最近の総選挙では最高である。
韓国の国会議員総選挙は大統領の中間評価として位置付けられる。今回の選挙で与党の「国民の力」は108議席に留まり、数字だけを見ると、与党の惨敗で尹政権への厳しい審判が下ったと言えよう。しかしながら、野党は2 / 3の200 議席には届かず、大統領の弾劾や改憲による尹政権の早期打倒は難しくなったが、尹政権の早期打倒と言う国民の怒りが完全に収まったわけではない。
今回の選挙の台風の目は、文政権時代に法務大臣を歴任した曺國氏が代表を勤める「祖国革新党」である。結党宣言から僅か2 カ月足らずで臨んだ選挙戦で比例区だけ候補を出したが、得票率24 .25%で12議席を獲得した。驚異的である。10議席を超える政党は単独で法案の発議ができる。
野党は、検察改革関連法案や尹大統領夫人の疑惑を捜査するための特別検事法案などを国会に提出する構えである。仮に、これらの法案が国会を通っても、尹大統領は拒否権を行使できる。そのため、今後、与野党の確執や場外闘争が一層激しくなる可能性も排除できない。
仮に野党が200 議席に達していたら、野党の選択肢は尹政権打倒だけになる可能性が高い。しかしながら、200 議席に達していないため、今後の韓国国会は野党の腕の見せ所であり、野党の動き次第ではそのあり方が問われるであろう。
現在の韓国は二大政党制である。今回の選挙で「祖国革新党」は第三極と位置付けられている。しかしながら、今後の韓国国会における彼らの動きや202 7年の大統領選挙、202 8年の国会議員選挙の結果次第では、二大政党制の左派の一翼を担い続けるのか、多党制をリードする政党になるのかは未知数である。目が離せなくなる韓国政治である。