編集部
人口減少というと日本をはじめとした先進国の問題と捉えやすいが、実はそうではない。この問題を原俊彦『サピエンス減少』(岩波新書、2023年3月)を参考に読んでみる。
2022年7月に公表された国連の新推計(UNWPP22)によると、世界人口は2022年7月現在、79億7511万人だが、2086年の104億3093万人をピークに減少に転じるという。もっとも事態は単純ではなく、日本などは既に人口減少期に入っているが、サハラ砂漠以南のサブサハラ・アフリカなどはいまも人口増加率が2.5%と人口爆発のレベルである。つまり21世紀とは人口爆発と人口爆縮が同時進行する人口危機の時代といえる。
人口爆発地域が社会的成熟を果たして人口増加率が安定していくためには、少なくとも人口成長率を上回る社会的生産の成長が実現されなければならない。でないと飢餓や暴動などで社会が破綻する。一方、人口減少期に入った地域において持続可能性を維持するためには、自国内で合計出生率を上昇させる政策を実施するだけでは足りず、サブサハラ・アフリカなどへの経済支援、国際人口移動(移民)の受け入れなどに早急に着手する必要があるという。
つまり人口減少問題は地球規模で生じている問題であり、地球温暖化問題と同様に世界規模での対策が検討されないと解決できない問題であるといえる。
一方、原氏は人口減少問題への対応の難しさについて、
「人口減少は、その地域の問題としてしか捉えられず…(中略)…地域間の連携や協力より、むしろ地域間競争をいかに勝ち抜くかという生き残りゲームとなってしまい、結果的に、世界各国で、あるいは地方自治体間で、減少していく人口の奪い合いという、最終的な勝者がいない戦いが起こることになる」
原俊彦『サピエンス減少』(岩波新書、2023年3月)
と述べている。つまり椅子取りゲームのような対策は、地域にとっても人類全体にとっても事態を悪化させるだけだということだ。
地球規模で考え、地域で行動する。グローカル思考はここでも求められている。